民泊ビジネスにおいて、”消防を制するものは民泊を制す”と言われるほど重要かつ難しいのが消防です。多くの民泊事業者がこの消防で大きな壁にぶつかります。この記事では、不在型民泊をマンション・アパート等の集合住宅で行う場合の消防チェックポイントについて詳しく解説します。
マンション民泊の消防設備と物件選びの注意点
民泊(住宅宿泊事業)を始めるにあたっては、そのままの住居設備では行うことができず、物件に応じて定められた消防設備を導入する必要があります。
中でも、マンション民泊における消防設備の整備が大きなハードルになりうるのは、部屋だけでなく建物の条件も加味する必要があることが大きな理由です。
せっかくオーナーが民泊OKといってくださったとしても、実はその建物自体の消防設備が民泊実施条件に適合していなかったり…、建物の条件から室内に高額な消防設備を導入しなくてはいけなかったり…、などの理由からやむなく断念ということが実はとても多いのです。
これから物件を探す方は、前提条件として、民泊運営に必要な消防設備がすでに整っている、あるいは条件が比較的厳しくない物件を選ぶことが現実的です。そのため、以下の前提条件のもとで物件のチェックを行いましょう。
「建物」の消防設備確認ポイント
まず、民泊を実施したい部屋を含む建物が、民泊を行う上での消防設備条件を満たしているかを確認する。
- 自動火災報知設備
- 建物延床面積が500㎡以上の場合、既に自動火災報知設備の義務があるが特例等により設置を免除されている可能性があり、建物自体に配線工事が必要な自動火災報知設備が必要(建物に現状設備があるかどうかを確認し、無い場合は新たに工事して設置する必要があるため、ほぼ民泊は行えないと思った方が現実的)
- 建物延床面積が300㎡以上500㎡未満の場合、は特定小規模用自動火災報知設備が設置可能(ただし、屋内階段一系統の建物で3階以上の階又は地下階に民泊がある場合は不可)。
- 民泊が建物延床面積の「10%以下」は宿泊施設のみ設置すればよい
- 民泊が建物延床面積の「10%を超えかつ300㎡未満の場合」であり、かつ民泊に使用する階層が2以下の場合は宿泊施設のみ設置すればよい(3層以上の階に渡る場合は、3階以上の階又は地下階に民泊があることになる。)
- 建物延床面積が300㎡未満の場合、民泊を行う部屋のみ特定小規模施設用自動火災報知設備の対応をすれば十分
- スプリンクラー
- 建物階数が11階以上の場合、11階以上のフロアにはスプリンクラーが必要(古い建物の場合など、満たしていない場合もあるので注意。例え民泊を行うフロアが10階以下であっても建物条件を満たしていない場合民泊は行えない)
- 建物延床面積が6000㎡以上でかつその90%以上が民泊利用の場合はすべてのフロアにスプリンクラーが必要(宿泊施設とみなされるため、ホテル同等の設備が必要となる)
- 建物延床面積の90%未満が民泊利用であっても、民泊利用の合計面積が3000㎡以上の場合はすべてのフロアにスプリンクラーが必要
- 建物階数が11階以上の場合で、消防法施行規則第13条に定める防火区画がある場合に限り、10階以下についてスプリンクラー設置が免除される場合がある(詳細は管轄消防署確認が必要)
- 誘導灯
- 建物延床面積の90%以上の住戸が民泊となる場合、宿泊施設とみなされるため、建物のすべてのフロアに誘導等が必要となる
- 建物延床面積の90%未満の住戸が民泊となる場合で、消防法第28条の2に定める防火対象物が無い場合、建物のすべてのフロアに誘導灯が必要となる
- 建物延床面積の90%未満の住戸が民泊となる場合で、消防法第28条の2に定める防火対象物がある場合、民泊が存在するフロアのみに誘導灯が必要となる(詳細は管轄消防署確認が必要)
「部屋」の消防設備確認ポイント
上記の建物が問題なければ、次は室内です。
配線工事が必要な自動火災報知設備ではなく、特定小規模施設用自動火災報知設備で行えるかどうか?スプリンクラーの設置が新規で不要か?誘導灯は必要か?など高額になりがちな設備については確認しましょう。
- 消火器
- 部屋の床面積が150㎡以上の場合、消火器必要
- 地下・3階以上でかつ部屋の床面積が50㎡以上の場合、消火器必要
- 1-2階の部屋の場合、消火器不要
- 床面積50㎡以下の場合、消火器不要
- 自動火災報知設備
- 建物延床面積が300㎡未満の場合、民泊を行う部屋に特定小規模施設用自動火災報知設備が必要
- 建物延床面積が300㎡以上の場合、民泊を行う部屋に配線工事が必要な自動火災報知設備が必要(無い場合は、建物所有者が新たに工事して設置する必要があるため、ほぼ民泊は行えないと思った方が現実的)
- 誘導灯
- 建物延床面積の90%以上の住戸が民泊となる場合、宿泊施設とみなされるため、民泊を行う室内すべてに誘導灯が必要となる
- 建物延床面積の90%未満の住戸が民泊となる場合で、以下のすべての条件に当てはまる場合は室内に誘導灯は不要となる
- 民泊を行う住戸の床面積が100㎡以下
- 民泊を行う住戸内の廊下に非常照明または各宿泊室に非常ライトを設置
- 民泊を行う住戸内の玄関につながる廊下へ、2以上の居室を経由せずたどり着ける、また経由する部屋に非常ライトを設置
- 防炎物品
- すべての民泊を行う部屋に必要
- スプリンクラー
- 11階以上のフロアの部屋で民泊を行う場合は室内に必要
消防を制するものが、民泊を制す
冒頭でお書きしたように、民泊においては消防がとても重要な要素です。
まずは賃貸契約する前に図面を持ってその住所の管轄の消防署に相談に行くことをお勧めします!
—このコラムを書いた人—
ゆめゆめトラベル https://www.yumeyumetravel.com/
ゆめゆめトラベル 代表 浅井 夢
所在地:東京都三鷹市井の頭4-16-6-403
住宅宿泊管理業者
登録番号:国土交通大臣(01)第F03187号
登録年月日:令和6年2月15日