民泊で火災保険が必要な理由とは?住居用保険との違いと正しい選び方

民泊の火災保険はどんなものに入ったらいいの?と悩む方は多いのではないでしょうか。短期で不特定多数が宿泊する民泊事業として、適切な火災保険を選ばなくてはいけません。

  • 自分の所有物件で民泊をする人
  • 転貸で民泊運営する人
  • 民泊事業者に物件を貸し出すオーナー

それぞれの立場で、民泊の火災保険に関する基礎知識を身につけたい方に向けて解説します。

今回は一般的な火災保険を例に解説していきます。各保険会社の商品ごとに補償内容に細かい違いがあるかもしれませんが、保険会社間の比較はしておりませんのでご了承下さい。

民泊向けの火災保険と住居用保険の違い

まず、火災保険には大きく分けて『住居用』と『事業用』があります。

  • 住居用:自分が住むマイホーム向け
  • 事業用:店舗・事務所・民泊など、事業を営む建物向け

民泊は短期滞在者が頻繁に入れ替わるため、必ず事業用で契約する必要があります。「住居用」のまま契約していると、万が一火事や水漏れ事故が起きても保険金が下りない可能性があるので注意しましょう。また、『事業用』の中でも店舗なのか事務所なのか民泊なのかで保険の内容も変わります。

さらに民泊の場合は、年間180日運営の住宅宿泊事業法と旅館業のどちらなのか?家主不在型と家主居住型のどちらなのか?でも変わってくるため、必ず代理店に正確な運営形態を伝えましょう。

民泊向けの火災保険の3つの補償対象

次に、民泊の火災保険において何を補償するのかという「保険対象」についてご説明します。保険対象となりうるのは、「建物」と「家財(設備・什器)」と「ゲスト」の3つです。火災保険の基本は「建物」と建物内の「家財」であり、建物を利用した「ゲスト」のケガの補償はあくまでもオプションになりますので必要に応じて加えれば良いでしょう。

なお、転貸で運営している場合、事業者(ホスト)は「家財(設備・什器)」のみ加入すればよく、「建物」は物件オーナーが加入するというのが一般的です。物件オーナーも、民泊で貸し出すことを踏まえて正しい火災保険に入りましょう。

① 建物補償|建物評価の考え方

まず、1つ目の「建物」について考えていきましょう。火災保険の保険料は、この建物をどこまで補償するかで大きく変わってきます。建物を金銭的に評価した保険価額には、「新価」と「時価」という2通りの考え方があります。

新価建物の再調達価格。同等の物を新たに建築、または購入するために必要な金額(築年数、構造、所在地、床面積で保険会社が算定)。
時価新価の額から経年劣化などを経て消耗した分をひいた金額。

時価額だと修理費用を賄いきれない可能性もあるため、一般的には新価で算定します。保険会社側も、十分な補償ができず顧客トラブルの原因になるため、時価額は避ける傾向にあるようです。

ここで皆さん「保険料をできるだけ安くするにはどうしたらいいの?」と思うかもしれません。

基本的に、新価については保険会社が算定するため加入者側でのコントロールが難しいのですが、建物の再建築価格の一定範囲内(例えば80~120%)で保険金額を設定できる場合もあるので相談してみましょう。

ただし、保険金額を下げれば保険料は安くなりますが、万が一の火災で建物が全焼した場合に受け取れる保険金も少なくなりますので注意が必要です。

なお、建物を建て直さず更地にする解体費用だけの補償にできないか?と思う方もいるかもしれませんが、これはNGです。あくまでも同等のものを建て直すことが保険商品の大前提となります。

また、火災保険に付帯する補償の一つである「水災補償」は、台風・豪雨・洪水・土砂崩れなどによる浸水被害を対象とした補償ですが、標準的には、建物や家財の再調達価額(再建築や買い替えにかかる費用)の100%を上限に設定しているケースが多くなっています。

保険会社によっては、これを下限である建物や家財の再調達価額の70%や30%に設定することで、保険料を抑えることができる商品もあるようです。

水災補償は火災補償に比べて発生頻度が低いと言われている一方、発生した場合の被害額が大きくなる傾向があります。そのため補償割合を下げると、保険会社が負担するリスクが軽減され、結果として保険料も低くなるということなのです。

なお、地震保険は特約の要素ですのでつけなければ安くなります。

通常の火災保険だけでは、地震や噴火またはこれらによる津波を原因とする損害は補償されません。また、地震保険は単独では契約できませんのでご注意ください。

②家財補償|家財補償設定方法

次に、保険対象のうち2つ目の「家財(設備・什器)」について考えてみましょう。家財補償とはその名の通り、室内にある家具・家電・備品を対象とした補償です。

民泊では「オーナー所有(転貸の場合は事業者所有)の家具・家電・調度品」が対象であり、ゲストの持ち物は対象外です(宿泊客の荷物は通常「宿泊者自身の保険」または「賠償責任保険」の対象です)。

金額設定の考え方は、「新品で買い直す費用」=再調達価額ベースで算出するのが基本です。「現在使っている家財を新品で買い直したらいくらか」で設定します。

家財項目金額
ベッド × 3台30万円
冷蔵庫 × 1台15万円
洗濯機 × 1台10万円
ソファ × 1台20万円
その他約20万円
家財補償の設定額100万円
例)設定金額の考え方

実際の家財合計額より少なめに設定することは可能ですが、保険金は設定額が上限なので注意が必要です。逆に、過剰に設定しても支払われるのは実際の損害額までなので、過大設定は不要で良いでしょう。

目安としては以下を参考にしてください。

  • 1R〜1LDK規模の小型民泊:50万〜100万円程度
  • 2LDK〜3LDK規模のファミリー向け:100万〜300万円程度
  • 高級志向・デザイナーズ物件:300万円以上

③ゲスト補償|賠償責任保険について

最後に、保険対象のうち3つ目の「ゲスト」について考えてみましょう。

そもそも、火災保険は建物・家財といったオーナー自身(転貸の場合は事業者の家財)の資産を守る保険です。そのため、ゲストへの補償は「賠償責任保険」や「施設賠償責任特約」などオプションで考える必要があります。

ゲストがケガをした場合

例:階段で転倒、浴槽での事故、備品の破損によるケガ
→ 施設側に過失が認められると、施設賠償責任保険で治療費や慰謝料をカバー可能です。

ゲストの持ち物が損害を受けた場合

例:天井からの漏水でゲストのスーツケースやPCが壊れた
→ これも施設側の管理責任があれば賠償責任保険で補償対象です。

ゲストが第三者に損害を与えた場合

例:宿泊中に誤って火災を起こし、隣家へ延焼
→ ゲスト自身の個人賠償責任に該当します。ただし、実際はオーナーが責任を問われるケースもあり、施設賠償でカバーできる契約を選ぶことが安心。

なお、Airbnbなどは独自の「日本ホスト保険」を掲載物件を対象に提供していますが、上限や免責があるため十分ではないことも多いです。

>>Airbnbの「日本ホスト保険」について

日本国内で民泊を事業として行う場合、国内の損害保険会社による火災保険+施設賠償責任保険を併用するのが安心です。

民泊の火災保険選びのポイントまとめ

いかがでしたか?最後に、本コラムでお伝えした重要なポイントを以下に箇条書きにしました。民泊の火災保険をどのように選んだらいいかわからない方も多いかと思いますが、参考になれば幸いです。

民泊は事業用火災保険が必須

住居用の火災保険では補償されないリスクがある。

火災保険の補償対象は3つ

  1. 建物
  2. 家財(家具・家電・備品)
  3. ゲスト(賠償責任・ケガ補償はオプション)

建物補償の基本

  • 評価方法は「新価(再調達価額)」が一般的
  • 水災補償金額を抑制して保険料を抑えられる会社もある
  • 地震リスクは火災保険だけではカバーできず、あわせて地震保険への加入が必要

家財補償の考え方

  • 新品で買い直す費用(再調達価額)を基準に設定
  • 過大設定しても実損分しか支払われない

ゲスト補償(賠償責任保険)

  • ゲストのケガや荷物損害、隣家への延焼などに対応
  • Airbnbのホスト保険は補償範囲が限定的

加入時の注意点

  • オーナー:建物補償中心に加入
  • 転貸ホスト:家財補償を中心に加入
  • 施設賠償責任保険のオプションを追加すると安心

—このコラムを書いた人—

ゆめゆめトラベル https://www.yumeyumetravel.com/

ゆめゆめトラベル代表の浅井

ゆめゆめトラベル 代表 浅井 夢
所在地:東京都三鷹市井の頭4-16-6-403

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登録年月日:令和6年2月15日