【2025年12月】東京23区の民泊規制の動向と今後の出口戦略

「民泊新法なら180日まで営業できるから大丈夫」
「豊島区や墨田区で民泊を始めたいけれど、規制が厳しくなったと聞いて不安…」

これから民泊運営を始めたいと思っている方の多くが、東京23区の規制強化について不安を抱えているのではないでしょうか。実は今、東京23区の民泊規制が大きく変わりつつあります。

2025年12月、豊島区議会で民泊規制を強化する条例改正案が可決されました。2026年12月16日からの本格適用により、営業日数が大幅に制限されます。

豊島区をはじめとして、特に影響が大きいのは以下の4区です。

  • 豊島区: 23区で最も厳しい規制を導入(2026年12月16日施行)
  • 墨田区: 無人運営モデルの実質的な排除を検討中(2026年4月1日施行)
  • 新宿区: 厳罰化による取り締まり強化(2025年11月に9事業者を業務停止)
  • 葛飾区: 墨田区に追随する方向性(2025年9月に条例制定の検討を公表)

この記事では、東京23区の民泊規制の最新状況を分かりやすく解説します。これから民泊を始める方が知っておくべき規制内容と、生き残るための出口戦略の基礎をお伝えします。規制強化の波に飲み込まれる前に、正しい知識を身につけましょう。

東京23区の民泊規制が強化されている理由

なぜ今、東京23区で民泊規制が強化されているのでしょうか。背景には深刻な社会問題があります。民泊件数の急増、生活トラブルの増加、管理不全の無人運営の拡大。これら3つの要因が、行政を動かしています。

民泊件数の急増がもたらした影響

インバウンド需要の回復により、都内の民泊施設数は急速に増えました。特に住宅地での届出件数が目立ち、住民の不満の声が生まれています。豊島区では約1,800件超の民泊が登録されており、これは23区で3番目の多さです。

池袋を中心とした観光需要の高いエリアに、民泊が集中している状況です。

住民の生活を脅かすトラブルの実態

各区の窓口には、住民からの苦情が殺到しています。ゴミ出しルールの無視、深夜の騒音問題、路上の喫煙といった、見過ごせない問題も発生しています。

豊島区の調査では、約7割の町会が「民泊で困ったことがある」と回答しました。6割以上が「生活環境が悪化した」と感じているのです。

無人運営モデルの課題

本人確認や鍵の受け渡しなどにおいて、対面同様の方法としてICT利用を可能としていることで、遠隔カメラやスマートロックだけの無人で運営する施設が増えました。トラブル発生時の対応が後手に回るケースが急増しています。

行政が本当に排除したいのは、住民生活と両立できない運営スタイルなのです。「民泊をすべてなくしたい」わけではなく、適正な運営を促すための規制強化といえるでしょう。
ゆめゆめトラベル会員の皆さんも、改めて気を引き締めて運営いただきたいです。

豊島区の規制強化が最も厳しい

豊島区の条例改正は、23区全体に影響を与える可能性があります。2026年12月16日から本格適用される新ルールは、極めて厳しい内容です。既存施設も1年間の経過措置後、全面的に新ルールが適用されます。

この条例改正の内容を正しく理解しておくことが、今後の民泊運営を考える上で不可欠です。

営業日数が年間120日に削減

改正前は年間180日以内の営業が可能でした。改正後は春・夏・冬休み期間のみ(7〜8月、12月15日〜1月14日、3月15日〜4月10日)となり、年間約120日に制限されます。

営業日数が33%減少することで、多くの施設が赤字転落するでしょう。固定費を考えると、収益モデルの根本的な見直しが求められます。

営業可能エリアが約7割減少

区内全域で営業できていた状況が一変します。住居専用地域や文教地区など、約7割のエリアで営業不可になりました。

立地条件の良い物件でも、継続できなくなる可能性があります。池袋周辺の好立地物件であっても、用途地域によっては新設ができません。

既存施設も例外ではない

「既にやっているから大丈夫」という考えは通用しません。経過措置は1年間のみで、その後は全ての施設が新ルールに従う必要があります。

2025年12月15日の条例施行から2026年12月16日まで、既存事業者には準備期間が与えられています。この間に、継続・転換・撤退の判断をする必要があるでしょう。

墨田区は台東区同様の常駐型へ

東京スカイツリーなど観光資源を抱えるエリアとして、インバウンド需要の回復とともに民泊物件が増加した墨田区では、2025年7月時点で届出民泊1,750件・旅館業許可施設875件に達したと報告されています。これまで非常に非常に規制が緩かった墨田区が、台東区同様の厳しいルールに変化します。

墨田区:無人運営の実質的な排除を検討中

2026年4月から予定されている墨田区の規制は、日数制限よりも無人運営モデルの縮小が本質です。住宅宿泊事業法(民泊新法)の基本的な枠組みに加えて、地域の生活環境を守るために地方自治体として独自の規制を導入します。主な変更点は次の通りです。

①営業日・時間の制限
区内全域で住宅宿泊事業の営業を「金曜正午〜日曜正午」のみとする制限が導入されます。
→ これにより平日の宿泊利用は原則困難になり、週末中心の運営モデルへの転換が求められます。

②常駐義務・運営体制の厳格化
宿泊施設には、施設内または隣接地に管理人室を設置し、管理者の常駐義務を課す方向です。
→ 通常の「30分以内駆けつけ」対応ではなく、常時対応できる体制が必要となります。

③標識掲示・情報公開
区が交付する標識を施設に掲示し、事業者の連絡先・所在地を公表・周知する義務が付されます。違反者については行政からの公表制度も取り入れられます。

④旅館業法も対象に
規制の抜け穴となりやすい旅館業法の簡易宿所についても、2026年4月以降の新規許可施設を対象に、従業者常駐義務・説明義務などの条例改正が行われ、民泊規制との整合性を図ります。

実質的にホストに求められる方向性は、週末のみの限定運営か管理者常駐型への転換。または旅館業への業態変更という、大きな決断が必要になる可能性があります。

新宿区・葛飾区の規制動向

新宿区、葛飾区では、それぞれ異なるアプローチで規制を進めています。各区の動向を把握し、自分の物件への影響を見極めましょう。

新宿区:取り締まりの厳罰化

新宿区では、宿泊実績の登録を怠っただけで1ヶ月の営業停止になります。2025年11月には、条例違反により9事業者に業務停止命令が出されました。(うち2事業者3物件が残念ながらゆめゆめトラベル管理下でした)

これは「指導」から「取り締まり」フェーズへの完全移行を意味します。この新宿区のやり方を追随しようとする自治体も出てくる可能性が高く、些細なミスが事業継続に致命的な影響を与える時代になったのです。

葛飾区:今後の方向性に注目

現時点では経過措置がありますが、方向性は墨田区と同様です。2025年9月に「住宅宿泊事業(民泊)と旅館業の条例制定を検討しています」と公式サイトで公表し、条例策定に向けたプロセスを開始しています。

「今は大丈夫」という状態が、実は最も危険なのです。準備期間があるうちに対策を打たなければ、突然の規制強化に対応できません。

東京スカイツリーや浅草などへのアクセスが良く、成田空港へも乗り換えなしで行けることから、民泊需要は高いエリアです。だからこそ、早めの情報収集と対策が求められます。

民泊規制に対処するには「出口戦略」が重要

ここまで東京23区の規制強化について見てきましたが、「では、どう対処すればいいのか?」という疑問が湧いてくるのではないでしょうか。実は、規制強化の時代において最も重要なのが「出口戦略」です。

多くの人は民泊を始めるとき、「どれだけ稼げるか」だけを考えます。しかし今の時代は、「どうやって畳むか」「誰に売るか」まで考えておかないと、大きな損失を被る可能性があるのです。

出口戦略を持たないリスク

豊島区の例を見れば明らかです。2026年12月16日から営業日数が120日に制限され、約7割のエリアで営業不可になります。この状況で事業を続けられなくなったとき、あなたには選択肢がありますか?

規制が厳しくなり事業継続が困難になったとき、スムーズに事業を手放せる準備をしておくこと。これが出口戦略です。

旅館業と新法民泊の決定的な違い

出口戦略を考える上で、制度の違いを理解することが極めて重要です。新法民泊と旅館業では、譲渡可能性に決定的な差があります。

旅館業は2023年12月の法改正により、事業譲渡(営業権の承継)の手続きが緩和・簡素化されたため、明確な出口があります。許可を持ったまま、次の運営者に引き継ぐことが可能です。

一方、新法民泊は譲渡不可で、既存事業者の廃業後に新規事業者の新規申請が必要になります。そのため、もしその自治体が新規事業者に対してのみ新規ルールを適用という場合に不具合が出るケースがあるのです。あくまでも届出が個人や法人に紐付いているため、「事業の譲渡」はできないのです。

この違いを理解していないと、規制強化が決まった時点で選択肢がなくなってしまいます。

今から準備すべきこと

規制強化はすでに始まっています。「まだ大丈夫」と思っているうちに、選択肢はどんどん狭まっていきます。

今のうちに、自分の物件がどの制度で運営できるのか、出口戦略は確保できているのかを確認しましょう。次の章では、具体的な状況別の対策を解説します。

今後の状況別の対策と出口戦略

あなたの物件がどのエリアにあり、どんな規制を受けるかで戦略は変わります。新法と旅館業の選択、法人化の必要性、譲渡可能性の確保。状況に応じた最適な対策を選びましょう。ここでは、具体的な以下のケース別に対策を解説します。

  1. 新法・旅館業どちらも可能なエリアの場合
  2. 新法のみ可能なエリアの場合

それぞれ順番に解説していきます。

新法・旅館業どちらも可能なエリアの場合

規制が新法のみ対象で新規施設にも適用されるなら、今すぐ旅館業への転換を検討してください。旅館業なら譲渡可能で、旧ルールのまま出口が確保できます。新法の場合、譲渡が難しいため廃業→新オーナーが新規開業となるため新ルール適用となってしまいます。

法人・個人は問わず、譲渡可能性を確保できることが旅館業の最大のメリットです。将来の規制強化にも対応しやすく、事業として安定した運営が可能になります。

ただし、規制が旅館業・既存施設にも適用される場合、逃げ場がなく事業継続は困難です。早期の売却検討か、他用途への転換(マンスリー・レンスペなど)を考えましょう。

規制が新規のみに適用される場合は、譲渡可能性が残るため比較的恵まれています。旅館業の許可があれば、事業譲渡の選択肢が残ります。

法人でも個人でも譲渡可能なため、事業を引き継ぐことができます。

新法のみ可能なエリアの場合

規制が既存施設にも適用される場合、後述している裏技にもありますが、法人所有への切り替えが有効です。個人名義では出口戦略が限定されます。

法人化により、将来的に株式譲渡(M&A)という出口が生まれます。転貸の場合、物件の賃貸契約はそのままに、運営法人ごと売却することで新法も廃業せず継続が可能です。これにより、事業価値を換金できるのです。注意点として、売却しても良い専用法人(対象の民泊事業に特化)にすべきです。

規制が新規施設のみに適用される場合も、同じく規制前に法人化を推奨します。将来を見据えた準備が重要です。

新法民泊のウラ技:法人ごと売る選択肢

新法民泊は物件単体では売却できませんが、抜け道があります。運営法人を新設し、株式譲渡で法人ごと売却する方法です。

  1. 民泊運営専用の法人を設立
  2. その法人名義で届出を行う
  3. 事業が成長したら法人の株式を売却
  4. 買い手は運営権を含む法人をまるごと取得

特に墨田区で新法運営しており、旅館業への転換ができないエリアの方に有効です。将来的に売却を考えているなら、今すぐ法人化を検討すべきでしょう。

これから生き残る民泊運営者の条件

東京23区の民泊は、副業・片手間の時代が完全に終わりました。これからの時代に生き残るには、3つの力が必要です。

  • 規制を読む力
  • 出口を設計する力
  • 民泊を事業として扱う力

それぞれについて、具体的に見ていきましょう。

規制を「読む」力

行政の動きを先読みし、自分の物件への影響を正確に把握できる人が生き残ります。各区の条例改正案を定期的にチェックしましょう。

パブリックコメントの内容を分析し、行政の本音(住民生活との両立)を理解してください。豊島区の例を見れば分かるように、パブリックコメントの段階から情報を追うことで、早めの対応が可能になります。

区の検討会資料や議事録も、貴重な情報源です。これらを確認することで、規制の方向性が見えてきます。

出口を「設計する」力

始める前から、終わり方まで考えられる人が成功します。旅館業か民泊新法か、譲渡可能性を考慮して選びましょう。

法人化のタイミングを戦略的に決め、M&Aを視野に入れた事業設計をしてください。事業を始める段階で、5年後、10年後の出口まで考えておくことが重要です。

規制が厳しくなったとき、スムーズに事業を手放せる準備をしておくことで、損失を最小限に抑えられます。

民泊を「事業」として扱う力

片手間や副業ではなく、本格的なビジネスとして運営できる人だけが残ります。財務管理を徹底し、リスク管理体制を構築しましょう。

住民との良好な関係づくりも、事業継続に不可欠です。近隣への事前説明を丁寧に行い、トラブルを未然に防ぐ努力が求められます。

24時間対応の連絡体制、厳格なハウスルール、定期的な運営報告。これらを確実に実行できる体制を整えることが、長期的な成功につながります。

まとめ

東京23区の民泊規制は、歴史的な転換期を迎えています。

豊島区では営業日数が年間120日に削減され、約7割のエリアで営業不可になります。墨田区、新宿区、葛飾区でも、それぞれ厳しい規制が導入・検討されています。

これからの時代に生き残るのは、規制を先読みし早めに動ける人だけです。出口戦略を最初から設計し、民泊を事業として本気で取り組む姿勢が求められます。

「とりあえずやってみた」「まだ大丈夫だろう」という考えでは、遅かれ早かれ淘汰されるでしょう。

これを機に以下を確認してください。

  • 自分の物件がある区の最新条例
  • 現在の運営形態(新法 or 旅館業)
  • 譲渡可能性の有無
  • 法人化の必要性
  • 出口戦略の明確化

特に東京23区で民泊を始める方は、これらのポイントを必ず押さえておきましょう。規制強化の波に飲み込まれる前に、正しい準備と対策を進めてください。

—このコラムを書いた人—

ゆめゆめトラベル https://www.yumeyumetravel.com/

ゆめゆめトラベル代表の浅井

ゆめゆめトラベル 代表 浅井 夢
所在地:東京都三鷹市井の頭4-16-6-403

住宅宿泊管理業者
登録番号:国土交通大臣(01)第F03187号
登録年月日:令和6年2月15日