民泊運営で必ず守るべき建築基準法|住宅規模と防火区画

民泊を始めるには、さまざまな法的要件をクリアする必要があります。その中でも建築基準法は、物件の構造面から宿泊者の安全を確保するための重要な法律です。

建築基準法では、民泊における3つの安全基準として、非常用照明器具、住宅規模、防火区画が定められています。非常用照明器具についてはこちらの記事を参考にしてください。

>>民泊の非常用照明の設置はどうする?建築基準法の設置基準を解説

この記事では「住宅規模」と「防火区画」に焦点を当てて解説します。特に一戸建てや長屋で民泊を運営する場合、住宅の規模や構造に関する厳格な制限があります。これらの要件を満たさなければ、営業許可は下りません。

これから民泊運営を始める方が、スムーズに許可を取得するために押さえておくべき法的要件をお届けします。

民泊における建築基準法とは

民泊において建築基準法は、構造面から宿泊者の安全を確保するための法律です。消防法とは異なる視点で、建物の安全性を評価します。

構造の視点から安全性をチェック

建築基準法は「構造」の視点から、宿泊者の安全性をチェックします。消防法が「設備」の視点から安全性を確認するのに対し、建築基準法は建物そのものの構造や規模が適切かを判断します。

火災などの災害が発生したとき、宿泊者が安全に避難できる建物になっているかが重要なポイントです。

チェックするのは保健所

建築基準法の確認を実際に行うのは、保健所などの民泊受付担当です。確認方法は書面ベースとなります。

建築の専門家ではない保健所の担当者が、専門的な内容を確認する体制になっているのが実情です。(自治体によっては建築士の確認を求めるところもあります)

そのため、自治体によって対応が異なる場合があります。また、担当者が建築基準法の詳細な緩和条件を把握していないケースもあります。申請前に必ず所管の保健所で確認しましょう。

民泊で住宅規模の制限が適用される建物タイプ

住宅規模に関する制限は、すべての建物に適用されるわけではありません。対象となる建物タイプを正しく理解しておきましょう。

一軒家と長屋のみが対象

住宅規模に関して注意が必要なのは、一軒家と長屋のみです。集合住宅(マンションやアパート)で民泊を始める場合、住宅規模の制限は気にする必要がありません。一戸建てや長屋で民泊を検討している方は、これから説明する制限をしっかり確認してください。

長屋と共同住宅の違いを理解する

長屋と共同住宅(集合住宅)の違いについて、正しく理解しておくことが大切です。
共同住宅は、階段部分や廊下などに共有スペースがあるマンションやアパートを指します。

一方、長屋は共有スペースのない建物です。具体的には、2世帯住宅や、京都によくあるような家同士が繋がった一連の建物などが該当します。

共有廊下や共有階段の有無が、判断の分かれ目になります。自分の物件がどちらに該当するか不明な場合は、保健所や建築士に確認しましょう。

民泊運営で注意!3つの規模制限とは?

一戸建てや長屋の場合、住宅規模に関する3つの制限があります。特に木造3階建ての場合は注意が必要です。それぞれの制限について、詳しく見ていきましょう。

制限1:3階以上を宿泊者に利用させない

最も重要な制限が、3階以上のスペースを宿泊者に利用させることはできないというルールです。木造3階建ての場合、宿泊者が使用できるのは2階までに限定されます。3階部分はホスト(家主)の居住スペースとして使うことは可能ですが、宿泊者を泊めることはできません。

竪穴区画があれば3階利用も可能

ただし、耐火建築物であったり、構造的に階段が区分されている「竪穴区画」があれば、3階の利用も可能になる場合があります。竪穴区画とは、階段部分が居室と壁とドアで完全に区分されている状態をいいます。

もし2階で火災が起こったとき、3階にいる宿泊者が避難する際、竪穴区画があれば火災現場を直接通ることなく逃げることが可能です。逆に竪穴区画がない3階建てで2階が火事になった場合、階段が火災現場を通るため、3階から避難できなくなってしまいます。これが3階利用を制限している理由です。

二世帯住宅も注意が必要

2世帯住宅で1階・2階・3階が2つの世帯に分かれる構造になっている場合も、長屋扱いとなります。そのため3階は原則として民泊に使えないので注意が必要です。

ただし、自治体ごとに判断が異なるケースがあります。集合住宅と同等の扱いでOKとする自治体もあるため、必ず事前確認が必要です。

制限2:宿泊者使用部分の床面積が200㎡未満

次に、宿泊者が使用する部分の床面積合計が200㎡未満であることが求められます。あまり大規模な施設は要注意ということです。宿泊者使用部分とは、宿泊室だけでなく、宿泊者が利用する廊下、トイレ、浴室、キッチンなども含みます。

耐火構造・準耐火構造なら緩和される

ただし、建物の構造が燃えにくいものである場合は、200㎡以上でも認められる場合があります。具体的には、建物の主要構造部が耐火構造・準耐火構造である場合や、避難経路に難燃材料の内装が使用されている場合です。

面積はコントロール可能

なお、面積の条件については、使用しない部分を設定することでコントロール可能です。
つまり、ホストしか使用できない鍵のかかったエリアを作ることで、宿泊者使用部分の面積を調整できます。

例えば、建物全体が250㎡あっても、50㎡分をホスト専用エリアとして施錠すれば、宿泊者使用部分は200㎡未満になります。図面上で明確に区分し、物理的にも鍵付きのドアなどで分離することがポイントです。

制限3:2階以上の各階の宿泊室が100㎡以下

また、2階以上のそれぞれの階における宿泊室の床面積合計が100㎡以下であることも求められます。ここでいう「宿泊室」は、実際に宿泊者が寝泊まりする部屋のみを指します。廊下やトイレなどの共用部分は含みません。

たくさんのゲストが寝ているときの火災を想定

なぜこのような制限があるのでしょうか。たくさんのゲストが寝ているときに火事になると、避難が大変だからです。特に2階以上の場合、避難経路が限られるため、一定以上の人数を収容すると危険性が高まります。

複数の階段ルートがあれば緩和

もし地上まで2つ以上の階段ルートがあるなら、100㎡を超えても認められます。複数の避難経路を確保することで、火災時の安全性が高まるからです。

まとめ

民泊における建築基準法の制限、特に住宅規模と構造について解説しました。

一戸建てや長屋で民泊を運営する場合、3階以上の使用禁止、宿泊者使用部分の床面積200㎡未満、2階以上の宿泊室床面積100㎡以下という3つの制限があります。

特に木造3階建ては注意が必要です。ただし、耐火建築物や竪穴区画の設置、複数の階段ルートなど、建物の構造によって制限を緩和できます。

住宅規模や構造は、民泊運営の可否を判断する重要なポイントです。物件選びの段階から建築基準法の要件を意識しましょう。まずは所管の保健所に物件の図面を持参して事前相談に行き、具体的な対応を確認してください。

—このコラムを書いた人—

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ゆめゆめトラベル代表の浅井

ゆめゆめトラベル 代表 浅井 夢
所在地:東京都三鷹市井の頭4-16-6-403

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